可愛くないから、キミがいい【完】



和泉しゅうがアイスをもって、部屋に入ってくる。

ほい、と投げてきたから、キャッチせざるを得ず。「投げないでよ」と文句を言ったら、それには答えずに和泉しゅうは私の隣に座った。


「髪、まだ濡れてるよ」

「すぐ乾くから、別にいい」

「あんた、毎日アイス食べてるの?」

「まあ、だいたいな。夜のほうが、甘いもの食べたくなんだわ。なんでか分かんねーけど」

「よく太らないね。部活もしてないのに」

「時々、バスケはしてるけどな。太りはしないけど、中学のときより体力は落ちた気するわ」

「ふぅん。……今度、みゆも一緒にバスケしてみたい」

「ほんとにかよ」

「……うん」

「じゃあ、今度な。教えてやる」

「みゆ、あんまり運動はできないから、他のひとは誘わないでよ」

「分かった。ふたり」

「うん、ふたり」


自分がしたいというよりは、和泉しゅうがしているところがみたいというのが本当だったりする。

共学のバスケ部だったら、間違いなく、今よりもモテてしまっていると思うから、この男が男子校の帰宅部でよかったなと思った。



アイスを食べながら、ぼんやりとバラエティ番組を見る。そっと、和泉しゅうに寄りかかってみる。

可愛く甘えるなんてことをこの男相手にすることはほとんどないけれど、それでも私にだって甘えたくなるときはあるのだ。

和泉しゅうは何も言わずに、ちら、と私を見ただけだった。


お笑い芸人の発言に、ははっと笑う和泉しゅうの身体の振動が、直に伝わる。

目つきは悪いけれど、彼は、結構、感情豊かだと思う。

私といて、気を抜いているからかもしれない。私は、和泉しゅうといると、そうなってしまうから、和泉しゅうもそうだったらいいのに、と思う。