可愛くないから、キミがいい【完】




私が使っているSNSの投稿アプリを和泉しゅうの携帯にインストールさせたのは、本当につい最近のことだ。

和泉しゅうはかなり渋っていたけれど、私が無理矢理させた。和泉しゅうがフォローしているのは私だけで、和泉しゅうをフォローしているのも私だけだ。

友達と繋がらなくていいのかと聞いたけれど、アプリ自体にあまりにも興味がなさすぎるみたいで、彼は首を横に振るだけだった。

私は和泉しゅうのことをタグ付けすることもないし、誰も和泉しゅうがSNSの投稿アプリに登録していることに気づいていないと思う。


すぐに、和泉しゅうからのいいねの通知がくる。

どうせ、すぐ隣でウンザリしているのだろうけどいいのだ。和泉しゅうにしてみれば、SNSに関しては、すべて付き合ってやってるという感覚なのだろう。

それで、もう、全然いい。私が、和泉しゅうのスイーツめぐりに付き合ってあげているのとだいたい同じことである。



「みゆのこととか、一回くらい投稿しないわけ?」

「しない」

「したいと思わないの?」

「なんで他にわざわざ見せないといけねーんだよ」

「自慢の彼女じゃないの?」

「自慢すんのって、なんか相手のこと物扱いしてるみたいで俺は嫌だけど」

「……ひねくれてる。みゆは、自慢されると嬉しいけど」

「自分だけ知ってることが多い方が絶対いいだろ。特別って感じがする」



和泉しゅうの思考回路は、時々、変だ。というよりも、私とは全然違うから驚くと言った方が正しいかもしれない。

それでも、和泉しゅうの考えが、なぜか腑に落ちてしまうなんてことがままあり。今回も、そうだった。

それを悟られたくなくて、唇を尖らせたら、隣から、カシャ、と写真を撮る音が聞こえたから、慌てて、隣に顔を向ける。

そうしたら、和泉しゅうは目つきの悪い目を細めて、はは、と笑った。

今の私の顔は絶対に可愛くない。ただのふくれっ面だったと思う。いつもは全く私のことなんて撮らないくせに、どうしてこんなタイミングなのだろう。

本当に最悪だ。



「何で撮ったわけ」

「手が滑った」

「嘘つかないで。絶対、投稿しないでよ」

「するかよ」

「したら、あんたがされて嫌なことみゆだってするから」

「だから、しないって言ってんだろ」


信用ならないので、じっと和泉しゅうの携帯を見ていたら、彼は、SNSの投稿アプリは開かずに、その写真をお気に入りに登録しただけでだった。

ホッとしたけれど、どうして可愛くない顔の私をお気に入りするのか謎だ。

和泉しゅうから、携帯を奪って、カメラロールを確認する。「取り上げんな狂暴」と横から文句が飛んできたけれど、無視をした。

和泉しゅうのカメラアプリのアルバムの中でお気に入りに登録されていたのは、たったの二枚で、一枚がついさっきの可愛くない私のふくれっ面と、もう一枚が、付き合う前にテーマパークに行ったときに和泉しゅうが私の携帯の画面越しに撮っていた額から上だけの私たちの写真。

たった二枚が、どちらも私との写真だという事実に、なんだか、不意打ちで、お前は特別だって言われているみたいに感じて、頬がゆるんでしまう。