とん、と、膝を広野にあてて、目が合った瞬間に、顔を近づけて、唇に触れる。
許可は、とらない。
はじめてキスをしたあの夜から、この女が、拒まないということを、勝手に答えにしている。
触れたい。今まで、付き合ってきた女に抱く気持ちとは明らかに違っていて、本当に他人を好きになるというのは、こういうことなのだなと理解した。
一度唇を離して、至近距離で広野の瞳をとらえる。
「……あんた、ぜんぶ、ダサいから」
「お前もダサい」
「みゆは、ダサくない」
「あっそ」
文句を言わないと気が済まないなら、ずっと言っていてもいい。
そう思いながらも、すぐにもう一度唇を塞いでしまう。
周りに誰もいないのをいいことに、口づけを深める。
舌を絡めたら、広野の方も応えてきた。
水音が漏れる。鼓膜が、甘ったるく痺れる。
制服のブレザーをぎゅっと掴んでくるのにもかなり煽られている。
わざとだったら、ムカつくけれど、わざとでも、もういいよ、と思う。
しばらく口づけを繰り返していたけれど、
遠くのほうで犬の鳴き声が聞こえて、我に返った。



