可愛くないから、キミがいい【完】





繋いだ手だけが温かくて、それ以外が寒かったから、尻をすべらせて、広野との距離をつめて半身をくっつけたら、また睨まれた。

もう睨み返すのも面倒で、「さみーんだよ」と言葉だけ返す。


まったく付き合いはじめとは思えないような関係だと思う。

だけど、別に他はどうでもいいし、そもそも最初から、この女との間で、一般的で単調なことなどほとんどなかった。


「そういえばだけど」

「なんだよ」

「……今日、みゆ、年下の男の子に学校で告白されかけたんだった」



ちら、と何かを企んでいるような、試しているような、上目づかい。

その色からは、完璧に、可愛げだけが排除されているけれど。


この女のこういう、わざわざ試さなくてもいいことを試してくるようなところはたぶん、これからも好きにはなれないのだろうなと思いながら、しっかりと目線を合わせる。


「それを俺に言って、どうしたいんだよ」

「べつに」

「どうでもいい」

「………みゆも別にどうでもいいんですけど」

「普通に、興味ない」

「……あっそう」


広野は、不満げに口を閉じて、俯いた。


気にならないといったら嘘になる。

どうでもいい、も嘘だ。

恋心とは、それらから完璧に切り離されたものではない。