クレープ屋を出た頃には、日はほとんど落ちていた。
特にしたいこともなく、かといって、そのまま解散する気にもなれなかったので、駅の近くの公園へ行くことになった。
公園といっても子どもが遊ぶような遊具はなく、芝生が広がっているだけだ。
夕方であることもあって、ひとけもあまりなく、閑散としていた。
大きな池の前にある二人掛けのベンチに並んで座る。
わざと手に触れて、何も言わずに繋いだら、可愛げのない顔でしっかり睨まれた。
なんだよ、と思いながら、睨み返す。
そうしたら、広野は、何か言いたげな様子をみせたものの、唇をぎゅっと結んで、アンバランス表情をつくり、俺から目を逸らした。
手は繋いだままでいる。
「ちょっと、ここ、不気味なんですけど」
「お前、グッドウィルハンティング見たことある?」
「天才の不良がでてくる映画?」
「そう、それ。そいつと心理学者が池の前で話すシーンあんの分かる?」
「分かる。うろ覚えだけど」
「その場所と、この場所がちょっと似てて、俺は結構気に入ってる」
「確かに、そう言われればそうかも。ちゃんとは覚えてないけど、あれいい映画だった気がする」
「ヒューマンドラマ系だったら、俺の中ではかなり上位に入る」
「ふぅん。………みゆ、その映画、もう一回見たくなってきたかも」
「今度、俺の家かお前の家で一緒に見てもいいけど」
「別に、みゆもいいけど」
「ん、じゃあ、また、今度な」
小さく頷いたら、繋いだ手に力をこめられたような気がした。
それから、しばらく映画の話をする。
たぶん、俺よりも広野の方が映画に詳しい気がする。
最近だったら、アダム・ドライバーが好きだと言っていた。
ジム・ジャームッシュの映画が好きだとも。
一貫して、特別に教えてやっているという態度で話す広野が、内心、少し面白かった。ジム・ジャームッシュの映画は俺も好きだ。やはり、趣味が合うのだと思う。



