「ねえ、」
澄ましたような顔で見上げられ、甘い生地を咀嚼しながら、ん?と、首をかしげる。
「それ、美味しい?」
俺の食べているクレープを指さした広野に、口の中のものを飲み込んでから頷いた。
チョコといちごは相性がいい。
ほんの少し唇をとがらせたまま、広野は俺から目を離さないから、首をわずかに傾げて、クレープ生地にチョコクリームをつけたいちごを乗せて、フォークで刺した。
「一口食う?」
「……和泉くんのくせに、気前いいんだ」
「知らなかったのかよ」
「知らないし」
「で。食うの?」
広野は、躊躇うような表情を数秒見せた後、ゆっくりと頷いた。
こんな小さなことでさえ、この女は素直になれないのだなと思った。
思ったと同時に、胸が軋む。
俺のクレープを一口食べた広野は、「……ありがと。美味しいんじゃないの?」といつものように偉そうな態度で俺に礼を言ったので、思わず、笑ってしまった。
「なんで、笑うわけ?」
「別に」
「………みゆのクレープも一口あげてもいいけど」
「ん。欲しい」
広野が、クレープの皿ごと俺の方へ寄せてきたので、この女が猫をかぶったままの状態だったら、食べさせようとしてきたりするのだろうなと思ってしまって、またからかうような言葉が口から出かけて、今度は言う前に留めた。
睨んだ表情がいいなと思う。
でも、怒らせていたいわけではない。



