広野は、メニューを一通り眺めた後、迷う素振りもみせずに、「みゆ、リンゴとラムレーズンのクレープにする」と少しご機嫌な様子で言った。
ラムレーズンが好きなのだろう。
俺のとこの学祭にきたときも、ラムレーズンのクレープがいいとかなんとか言っていたような気がする。
大抵、広野のほうが、俺よりも先に頼むものを決めてしまう。
自分のことを優柔不断だとは思っていないけれど、いつも、少し焦りの気持ちが生まれる。
「はやくしてよ」
「お前が、早いだけだろ」
「スイーツは直感がたいせつなの」
「誰の名言だよ」
「………みゆ」
「ダセェ」
「もういいから、早く決めたら?」
レアチーズ風いちごクレープと、チョコクリームのいちごクレープと迷った末に、チョコクリームのいちごクレープにした。
頼んで数分後に、綺麗に皿に盛りつけられたクレープを店員さんがもってきてくれた。
紙に巻かれたクレープの写真が、ネットにはのっていたけれど、どうやらそれはテイクアウト用だったみたいで、店内で食べる場合は、綺麗に皿に盛りつけてもらえるみたいだった。
愛想よく、広野が店員にお礼をいう。
俺も、頭だけ下げておいた。
フォークとナイフを手にとったところで、すぐ隣から、カシャ、とカメラの音がして、あーはいはい、と思いながら、視線もよこさずに先に食べ始める。
ほとんど必ずと言っていいほどに、写真を撮る広野。やはり、義務らしい。
どうせ、SNSに載せるようなのだろう。まったく興味がなさすぎる。
カシャ、カシャ、と鳴るカメラの音を聞きながら、食べ続ける。
何枚か撮って、広野はようやく満足したのか、携帯をテーブルに伏せておいて、フォークとナイフを手にとった。



