可愛くないから、キミがいい【完】






「お前、大丈夫? 一応、聞いておくけど」

「うんっ、和泉君が助けてくれたから」

「あいつ、女癖悪いんだよ。眼鏡あれ伊達だからな。真面目そうなフリしといて、油断させて、しょっちゅう女連れ込んでんの」

「そう、なんだね。助けてくれてありがとう」



もはや、ただの猿だったんだ。カラオケなんてこないで、動物園にいてほしい。

和泉君が来なかったら、あおい君を狙っていたんだと思ったら、ぞっとする。


まだ怖がっているふりは続けながらも、和泉君を上目で見上げたら、彼は私と距離を少しだけつめてきた。

これ、と無愛想に差し出してきたのは、私がわざと忘れていった携帯だ。



「え?」


しっかりと、とぼけておく。


「お前がこれ、俺のブレザーのとこに置いてくから渡そうと思ったら、カラオケの前にもういないし」

「あ、私、忘れちゃったんだ。ごめんね?」



携帯を受け取ると、はー、と小さく溜息を吐かれた。


「あおいと、駅から反対方向歩いてくの遠目で発見して吃驚したわ。なんで?って」


もしかして、これは、ヤキモチの流れじゃない?
人にとられそうになって、みゆの可愛さに気づいたのかもしれない。

こてん、と首をかしげて続きを促すと、煩わしそうに目を細められた。



「まー、同意のもとじゃなかったみたいだけど。あおいは、ナシだったもんな。でも、なんか、俺のブレザーの上に置いてあった携帯みて、確信した」



―――みゆのこと、気になりはじめた?