恐怖心に包まれていた心に、喜びが舞い込んでくる。
「しゅう、本当にお前そういうとこあるよなー」
あおい君は、悪事がばれたような顔で、苦笑いを浮かべていた。
ぽすん、と結構な力で和泉君があおい君の頭をはたく。痛そうに顔を歪めて、「分かってる、分かってる!」とあおい君はちょっとビクビクしていた。
「……みゆは、和泉君に、送ってもらいたい」
「は?」
「分かった。みゆちゃん落とせなさそうだし、俺帰るわ。じゃーね。……しゅうは、また明日学校で」
「おー、明日なー」
あおい君が、とぼとぼと一人で帰っていく。
ばーか、あんたとなんてキスさえしたくないし、なんて、その背中に、心の中でめいいっぱいの悪態をついておくことは忘れない。することしか考えていない男の子なんて、嫌いだ。
私と和泉君が、その場に取り残される。
あおい君に怖い思いをさせられたのは最悪だけど、結果的に、今、思い通りにはなっている。
忘れ物をした私を和泉君が追いかけてきてくれるという展開だ。



