「ちょっと、待って、おねがいっ、」
「家ついたら、可愛いみゆちゃんの話、いっぱい聞いてあげる」
何いっても聞いてはくれなさそうなあおい君に、サイアク、キュウショ、ケル、を覚悟した。
そのとき、だった。
「おい、いったん止まれよ」
後ろから、クリアじゃない低い声が、聞こえてきた。それは、結構焦ったような声音で。
肩を震わせて、ぴたり、とあおい君が足を止める。その隙に、捕まれた手首をあおい君から振り払って解放させた。
「(助かった、)」
「息子の一人暮らしの部屋、ヤリ部屋になってんの知ったら、さすがに、お前の親、悲しむんじゃねーの」
誰の声か、分かる。
だって、さっきまでずっと隣で聞いていたから。
振り返ったら、予想通りの人がいた。
和泉君だ。
息が切れている。
走って追いかけてきてくれたのだろうか。



