あんまり、ふざけないでほしかった。
ふざけてるのは、私じゃなくて、和泉しゅうだ。
お願いだから、可愛い自分のままで、ことをすまさせてほしい。そう思いながら、和泉しゅうを見上げて、口を開く。
「……離してよ」
余裕のある声で言いたかったのに、
か細い声になってしまった。
周りには人がたくさんいる。
それなのに、可愛い声も、可愛い顔も、いま、できない。
そのことに対して焦りが生まれたけれど、それ以上に、掴まれた腕が熱くて、一刻も早く、和泉しゅうの圧力から逃げ出したかった。
「………離してよ!」
「は? 絶対離さねーわ」
は?じゃないんだよ。
和泉しゅうの暇つぶしに付き合っている時間は、もうないのだ。あんたといると、私はだめになる。
今だって、一生懸命つくりあげてきた天使の輪郭が解けてしまいそうで、恐ろしい。
というか、もう、きっと、解ける。
一刻も早く、逃げ出したい。
だから、本当に、
お願いだから、手を離してほしい。
「離して」
「みゆが嫌がってる。離せよ」
私には絶対向けないような鋭い声で、唯人君が和泉しゅうに言った。だけど、それにも、和泉しゅうは答えようとしない。



