可愛くないから、キミがいい【完】







まさか、引き留められるなんて思わなくて、
思考が停止する。



和泉しゅうのほうなんて見ないとさっき決心していたばかりなのに、ゆっくりと顔をあげて、視線を向けてしまう。

そうしたら、思いっきり眉間に皺をよせて、怒りの表情を浮かべている和泉しゅうに、瞳をとらえられてしまった。


これまで何度も和泉しゅうをイラつかせたり怒らせたりしてきたつもりだけど、そのときとは比にならないくらい怒っているようだった。

こんなにも人は恐い顔ができるのかと感心してしまうほどに。だけど、今はまったくそれどころではない。




どうして、と、また、思う。

怒りたいのはこっちだった。



無防備な自分をさらけだしたのに、私は、和泉しゅうのたったひとりの特別な女の子ではなかった。そのことに、どれだけ、傷ついたか、たぶんこの男は分かっていない。

私が自分で、勝手に傷ついて悲しくなっただけだから、和泉しゅうを責めることもせずに、シャットアウトしたのだ。


それなのに、どうして、閉ざしたものを、今更、強引にこじ開けてくるのだろう。




「お前、ほんとにふざけんなよ」


怒りたかったのは、
どう考えても、私の方だった、のに。



「何してんの?きみ」


唯人君が、私と和泉しゅうの間に割って入ろうとする。だけど、和泉しゅうはただ私をじっと睨んだまま、腕を離そうとはしなかった。

唯人君に、答えようともしない。


私しか見えていない、というより、見る気がないという態度をとり続けている。