何事もなかったかのように平然と和泉しゅうの横を通り過ぎようとした。
痛いくらいの視線を感じていたけれど、絶対にもう和泉しゅうのほうは見ないと決めていた。
「おい」
不透明な、低い声に呼び止められる。
懐かしささえ、まだ、感じられない。
怒りの感情とは別の感情がこころに流れ込んでくる。
だけど、無視をして通り過ぎた。
視界の端からも、和泉しゅうの存在が、消える。
足りないのではなく、いらない。
欲しいものをくれない相手なんて、必要ない。
和泉しゅうに、もう用はない。
呪った刹那で、安堵する。
だけど、その瞬間に、ぐっ、と腕を掴まれて、かなりの力で、後ろに引っ張られた。
「おい!」
それで、嫌でも、立ち止まることになった。



