可愛くないから、キミがいい【完】





特に行きたいところもないし、したいこともなかった。避けたい場所、避けたい食べ物、避けたい行為は、たくさんあるくせに、だ。


それでも、唯人君の手のひらの温度を感じていたら、欲しい態度と言葉を受け取るなら、あとのことはどうでもいいと思わなければいけないのかもしれないと思い直す。

天使なのだから、あまりにもわがままな態度はナンセンスだ。




手を繋いだまま、身体をくっつけて寄りそうようにして、校門を出る。


ずっとキス以上の行為も許していないくせに、「唯人君のお部屋でゆっくりしますか?」と適当な提案をして、唯人君に向かって可愛く首を傾げようと、顔をあげた。





―――――そのときだった。



「………………っ、え」



思わず、目を、見開いてしまう。



喉の奥で声が漏れた。

視線を唯人君に向けるはずだったのに、前しか、見れない。完璧に、目が、合った。

まっすぐに捉えられて、鼓動が不自由になる。


それで、いつの間にか、立ち止まっていた。




「みゆ? どうしたの?」



隣の唯人君の声も、遠かった。


どうして、と思った。単純な疑問として。

だけど、その次の瞬間には、どうしては、怒りに変わっていた。怒りの感情が生まれた時点で、どうでもいいとは思えていない、ということだ。


どうでもいいのに、
どうでもいいと思わせてくれない。

まだ、ぜんぜん、どうでもよくない。