可愛くないから、キミがいい【完】




「………好きだと思った人に、みゆ、裏切られた。その人にだけは、裏切られたくなかったのに、最悪だよ。あのね、みゆ、……――」



和泉しゅうのことを、隠しておいたほうがいいことは省きながら、少しずつ、パパとママに打ち明ける。


知らないうちに、映画は終わっていた。

両親に、自分の恋愛事情をちゃんと話すのは初めてだったけれど、どちらも真剣に聞いてくれて、本当に二人の娘でよかったなと思った。

パパなんかは、少し和泉しゅうに怒っていたし、ママは、ママとしてではなく、私よりも数十年この世界を生きてきた女性としてアドバイスをくれた。




「これからたくさん恋をするだろうから、楽しかったことだけじゃなくて、悲しかったことも大切にしまっておくといいよ」

「でも、みゆは、ぜんぶ、忘れたい」

「忘れたいって思いすぎると、忘れられない、苦しい呪いがかかっちゃうんだよ。無理に忘れようとしないで、次、また恋をしたときに、みゆにとって心地がいい記憶をそのうえに重ねていけばいい。いつか、あ、こんなこともあったなって、引き出しでも開けるくらいの気持ちで必ず思えるだろうから」

「ママは、そうやって、たくさん閉まってきた?」

「どうだろうねえ、パパの前では言わないよ」



ちょっと悪戯な笑みを浮かべたママに、パパは、「え、教えて。俺、そういうの知りたいタイプって知ってるじゃん。なんか、いきなりモヤモヤしてきた」と真剣な顔で言っていた。


娘の私の前では、パパの一人称は「パパ」だけど、ママのことで何かあると、時々「俺」になるし、口調もくだける。

最初は、私を慰めていたはずなのに、結局、最後は、私を挟んで、「言わない」と「教えて」の言い合いをはじめて、二人のラブラブを見せつけられただけだった。




だけど、ママとパパのおかげで、少し気持ちが軽くなったことは確かで。

夜は、思ったよりもすぐに眠れたし、嫌な夢を見ることもなかった。