可愛くないから、キミがいい【完】




たかが、ひとつの恋を失っただけだ。

もう、今日で、おしまい。
これ以上は、引きずらない。


ちゃんと引きずることができるほど、長い年月をかけて知り合ったわけでもなかった。そう思い込んで、和泉しゅうにかかわるすべての情報を消した後、携帯の電源を落とす。



いまから、可愛い、可愛いだけの、天使な自分でいる。それで、私は、大丈夫になれる。

可愛いが正義の世界で、
裏切られていたほうが、まだましだ。


本当にそう思っているのに、
涙はやっぱり止まってくれない。




ママが帰ってきて、三人でパパが作った夕飯を食べているときも、泣いてしまっていたけれど、パパとママは何も言わなかった。

空気を読んでくれたのか、必要以上に話しかけてくることもなく、そういう気遣いがありがたかった。折角、パパがママに喜んでほしくて作った豪華な夕飯を、お葬式のような状態で食べることになってしまったけれど、今日だけはちょっと許してほしい。



お風呂を済ませた後、ドライヤーで髪を乾かしていたら、パパとママが、私の部屋にはいってきて、おうちレイトショーをしないか、と誘ってきた。

いつもなら断っていたけれど、今日は、携帯でSNSをひとつも確認したくなかったし、かといって、ひとりきりで色々なことを考えて孤独を感じてしまうのも怖かったから、了承する。