可愛くないから、キミがいい【完】







口の端にわざと生クリームがつくように食べた。

ひと口食べ終えて、パフェを和泉君に返した後に、「ありがとう」と、可愛くお礼を言う。


和泉君はしばらくじっと私の顔、というか唇の端を見たままだったけど、数秒後にはあっさりと視線を外してパフェを食べ始めてしまった。




本当に、思い通りにいかない。

ついてるよ、って指で取ってくれることを期待したのに、さすがラスボスだ。

仕方なく、自分から切り出すことにする。



「和泉君、みゆ、口に何もついてない?」

「うん」

嘘つきだ。さっき自分でつけたのだから、ついているはずなのに。


「え、本当に?」

「だから、うん」


そこでスカートのポケットから手鏡を取り出して確かめる素振りだけ見せておく。


「もう。意地悪だあ」


ついていたクリームを、唇で、ぺろりと舐める。

和泉君は、目を細めるだけで何も言ってはくれなかった。


その後、イチゴパフェを食べ終えた和泉君は満足そうに手を合わせて、お腹も満たされて気持ちがよくなったのか、よく分からない洋楽を選曲して、歌い出した。