可愛くないから、キミがいい【完】




二度返事をしなかったら、パパも諦めてくれたのか、それ以上、何も言ってくることはなかった。



自分の部屋に、プロジェクターをとりつけて、一番お気に入りの映画を流す。

ベッドの上で、膝を抱えながら、映画の中で、幸せそうに、ちょっと悪っぽく微笑む、憧れの女の人を見つめていた。


『わたしが可愛いからこそ、この世界はまわっているのよ」―――大好きなセリフ。

それだけど、あなたの世界と私の世界は、ぜんぜん違うみたいだよ。わたしの、世界は、わたしが可愛いからまわっているわけではなかったし、わたしの思うようにはなってくれない。

なんて。いま、映画のヒロインと対峙したら、あなたはうそつきだ、と泣いて責め立ててしまいそうだった。



映画の内容も、ちっとも頭に入ってこない。

それで、ぼんやりとしたまま、ポケットから携帯を取り出した。


ミーナたちからは、心配しているようなメッセージが届いていたけれど、いつもの調子で返すことなんてできるわけもなく。



わざわざ、もう一度、傷つくために、ドーナツ屋さんでなほちんに見せられたSNSのアカウントを検索して、和泉しゅうがうつっていた動画を見た。

ふたりで会っていた時の記憶を粉々にしたくて、何度も、何度も、再生ボタンを押す。

指が、震えてしまう。