可愛くないから、キミがいい【完】





なんにも考えたくない。本当に、なにも。

記憶がなくなればいいのに、と思った。

だけど、思考回路を止め続けることなんて不可能だ。



考えたくないことほど、考えてしまう。

電車に乗っているときも、家までの道を歩いているときも、頭の中は、なほちんに見せられた動画と、自分と会っているときの和泉しゅうの記憶でいっぱいだった。




家に帰ると、玄関にはパパの革靴があった。

ときどきパパは、仕事を早く終わらせて、私よりも先に家に帰宅してることがある。

リビングからは、いい匂いがした。どうせ、ママにサプライズで夕食を作っているんだろう。パパは、いつもママを喜ばせることばっかり考えている。

ママは本当に幸せものだ。パパもきっと、そう。

それなのに、ふたりの娘の私は、全然幸せじゃない。


ママが羨ましい。たったひとりの、かっこいい男の人に、ずっと愛されている。ママは、どうやって、パパみたいな人を捕まえたんだろう。


私は私なりに頑張ってきたつもりだ。

それなのに、結局、全然、うまくいかない。



幸せな人たちが、本当に、ものすごく、うらやましい。


どんな自分でいたって、選ばれないんだ。

可愛いのに、選ばれないときがある。
可愛くなかったら、もちろん、選ばれない。


可愛いが正義であろうとなかろうと、世界には簡単に裏切られてしまう。