可愛くないから、キミがいい【完】







ふと、はじめて会った時のことを思い出す。

あのときは、和泉しゅうに、可愛くみられることばかりを考えていたし、かなりの熱量で彼を恋に落としてやるつもりだった。


どう見えるかが大事だったあのときと、
自分がどう思うかを優先している、今。


私は変わったけれど、和泉しゅうはあのときとは何にも変わっていないのではないかと思う。


可愛くもない烏龍茶を飲んで、無理に表情をつくることもしていない私の隣で、変わらず、自分の望むままに存在している。



耳には、はじめて会った時と同じ、
リープロイのピアスが光っていた。

今まで気づかなかったけれど、気づいた瞬間、ちょっと鳩尾のあたりがムカムカしてくる。

ふぅん、まだそれしてるんだ、別に私はどうでもいいけど、なんて少し複雑な気持ちになりながら、じっと見てしまっていたら、和泉しゅうが私に顔を向けた。



「なに」

「ピアス、」

「ピアス? つけてるけど、なに」

「……なんでもない。……初めて会った時のことちょっと思い出しただけだし」

「あー、お前がキモい態度とってたときな」

「和泉くんだって、最低すぎて、みゆ、びっくりしたんだからね」

「俺のこと溝に落としてくるくらいだもんな。
あれ、今思い返すと、笑える。懐かしーわ」

「笑えないし。今日も、落としてあげてもいいけど」

「嫌だわ。溝にはまるとか、人生に一回で充分。お前今まで何人の男、溝に落としてきたんだよ」

「みゆが、そんな乱暴なこと何度もするわけないでしょ。和泉くんだけだし」

「へー。じゃあ、ある意味光栄なことで?」

「馬鹿じゃないの?」




本当に、何を言ってるんだか。

ローファーのつま先で、こん、と和泉しゅうの足を蹴る。そうしたら、和泉しゅうもすぐにやり返してきた。


目つきの悪い目を細めて、
「悪いけど、別にエムではねーから」と笑う。


あの日溝に落としてやった男が、
今日は、私の隣で、無防備に笑っている。


やっぱり馬鹿みたいだ。