可愛くないから、キミがいい【完】







カラオケの受付でようやく手を離されて、和泉しゅうが部屋をとってくれた。少人数用の部屋は満杯だったらしく、二人なのに五、六人用の少し大きな部屋に通される。


広いのだから離れて座ればいいのに、
なぜか、和泉しゅうは私の隣に座った。




「今日は、好きな曲歌えよ」

「言われなくても、そのつもりだもん」

「俺より、音楽詳しいらしいしな」


そう言って、マイクと曲を予約するためのタブレットを渡されたから、ムッとしながらも受け取る。


一番初めは、和泉しゅうが駅で聞いていたバンドの曲の中で一番好きな曲にしようと思った。

激しめな曲が多い中でのバラードだ。


カラオケの画面に表示された曲名を見て、「あ、俺もこれ好きだわ」と和泉しゅうが小さく笑う。



いつもは可愛いマイクの持ち方とか、可愛い歌い方とかそういうものだけを大切にして、カラオケでの時間を過ごす。


だけど、今日は、隣にいるのは和泉しゅうだったので、そんなことを考えるつもりもなく、好きな曲を好きなように歌った。

それが、とても楽しいのだと知った。