可愛くないから、キミがいい【完】








「ん、じゃあ、行くか」


そう言って、和泉しゅうはすぐに歩き出してしまう。腕をつかんでいたせいで、少し前のめりになり、「ちょっと」と文句を言えば、振り返った彼に笑われる。


細められた目が、心底楽しそうにきらきらして見えて、心臓がきゅっと痛くなった。


あぶない生き物が私の心臓に寄生しているのかもしれない。



一瞬だけ立ち止まった和泉しゅうは、腕に触れていた私の手を弱い力で振りほどいて、そのまま、流れるような動作で手をすくいとった。


本当に、何から何まで、勝手なのだ。


ごつごつした、私とは違う男の子の手。

指を絡められて、再び歩き出した和泉しゅうに、引っ張られるような状態で、私も歩き出す。




「……何なの」

「寒いんだろ」

「そう、だけど」

「腕よりはあったかいと思うけど」


ずっと引っ張られたままでいるのも癪だから隣に並ぶ。見上げたら、やっぱり和泉しゅうが、きらきらして見えた。

まだ星もでていないのに、目にも何か寄生しているのかもしれない。本当に、困る。



カラオケにつくまで、どちらも手は離さなかった。

こんなのは、だれの目から見ても、
付き合っているように思えると思う。


だけど、ちがう。

私と和泉しゅうは、ただ、そばにいるだけだ。


本当に、それだけ、なのだ。