可愛くないから、キミがいい【完】






表情を穏やかに戻して、小さな声で、そのバンドのCDも何枚かもっているのだということを和泉しゅうに自慢する。

そうしたら、和泉しゅうは、「今度貸して」と言ってきた。仕方ないから、一枚くらいなら貸してあげてもいいよ、と思いながら頷く。



「やっぱ、音楽の趣味あうな」

「みゆのほうが詳しいけどね」

「ん、そーですね」



なにそのムカつく返事、と文句を言おうとしたら、その前に和泉しゅうは改札の方へ歩き出してしまった。


あわてて、追いかける。

その背中は、なんだかはりきっているように思えた。


誰も知らないのだろう。この男は、今からパンケーキを食べに行くからはりきっているのだ。

たぶん、知っているのは私だけだ。


今日は、〈パンケーキ食べに行きたいから、付き合えよ〉というなんとも偉そうな言い方で誘われていた。