「これでも急いだもん。みゆの高校まで迎えにきてくれるとかできないの?」
「どうせ電車乗るんだから、駅待ち合わせの方がいいだろ。これ言うの何回目だよ」
「それはそうだけど。………で、何見てたわけ?」
「ん?」
「みゆに気づかなかったら。何見てたのかなって」
「あー、好きなバンドの新曲MV」
「なに?」
「ん、これ」
携帯の画面を見せてもらう。
そこに表示されていたのは、私も今日の朝見たばかりの動画だったから驚いた。
結構ゴリゴリのロックなので、天使条例に反するし、今まで誰にも好きだということは言っていないけれど、好きな邦画の主題歌に抜擢されていて、そこからよく聞くようになったバンドだ。
「……みゆも、これすき。朝起きてすぐに、聞いたもん」
「まじで? めちゃくちゃ良かった」
「………うん」
「はは。なんで、そんな不貞腐れたような顔してんだよ」
「は? してないんですけど」
あぶない。ここは、公共の場だ。
一瞬だけ、和泉しゅう以外の他人の存在を忘れかけてしまっていた。



