可愛くないから、キミがいい【完】





私は、今度こそわざとらしく少しムッとした表情をつくって、口を開いた。



「………手出さないんじゃなかったわけ?」

「な」

「な、って何よ」

「気が変わった、お前のせいで」

「はあ?……ムカつくんだけど」

「ムカつくんなら、悪かったな」

「……みゆのせいって、なに」

「いや、うそ。別にお前のせいではない」



そう言って、和泉しゅうは、たった今までキスをしていたことなんて何にも感じさせないような態度で、私に覆いかぶさるような体勢を止めて、ベッドにごろんと横になった。



全てのキスに理由があるなんてことは、
思っていない。

魔が差したなんて、
くだらない理由しかない場合もある。

和泉しゅうとのキスも、
そうなのかもしれなかった。


そうなのだと思うことで、私は未だ忙しない自分のハートを守ることにした。



「突き飛ばしてくるかと思った」

「突き飛ばしても、よかったんだけど」

「じゃあ、なんで突き飛ばさなかったんだよ」

「……………」

「お前が目、閉じるから」

「………魔が差したって言いたいんでしょ、どうせ」

「うん。まあ、30パーセントくらいは」



和泉しゅうは、正直者だと思う。

でも、それなら、100パーセントで魔が差したって言ってくれてもいいのに、と文句を言いたくなった。