可愛くないから、キミがいい【完】





交わし合える言葉が、
いま、何一つ、私たちにはないみたいだった。


悔しい。苦しい。
こんなのは、ちがう。望んでいない。


どんな御託を並べようとしても、今自分が拒もうとしていないという事実にかなうものがないというのが、現実で。


すでに近かった顔の距離が、またさらに近づいて、その距離がなくなる前に、ゆっくりと目を閉じたら、いま、自分は、今までの人生の中で、いちばん不本意な負けを受け入れようとしているのだと、認めるしかなかった。




「………っ、」


―――唇に、和泉しゅうの熱がのる。



それは、私が、無理矢理した学校祭での口づけとは全然違うキスだった。

丁寧に一瞬だけ重なって、こころが揺れた瞬間に、離れていく。

ゆっくりと瞼を押し上げたら、和泉しゅうにまた瞳を捉えられてしまった。



キスされたのではなく、したのだ。

受け身じゃない。自分が、選んで、それで、和泉しゅうも、それを選んだということだ。

意味の分からないプライドが働いて、自分で自分を苦しめてしまう。


たった今のことを脳内で反芻したら、胸がぎゅう、と絞られるように痛くなった。


可愛い顔なんて、何一つできなかった。

たぶん、今はどれだけ頑張っても、できない。