可愛くないから、キミがいい【完】






和泉しゅうが目を微かに細めて、
微妙に口角をあげる。


揶揄っているのか、呆れているのか、どちらであっても気に食わないけれど、穏やかな表情ではあった。



もぞ、とまた和泉しゅうが身体を動かして、ほんの少しだけ身体が遠ざかる。

触れていた熱が離れていった。

まだ奥につめられたなら、最初からそうして欲しかった、とまた文句を言いたくなったけれど、言わないことにした。




「広野」

「……何なわけ?」

「別に。おやすみってだけ」



眠りの挨拶をちゃんと言葉にするとは思わなかった。だから、咄嗟には返事ができなくて、数秒後に、「ふぅん」とだけ声にする。


それから、和泉しゅうに背を向けようとしたら、は、と笑われた。



「ふぅんってなんだよ」

「……おやすみってことだもん」

「あそ」

「………おやすみなさい」

「ん。おやすみ」



和泉しゅうには不似合いな優しい掠れた声も、
ただ眠りに近づくためだけのもの。


ベッド脇の棚に置いてあるテーブルランプの明かりを消そうと手を伸ばす。

カチ、という音のあと、部屋が真っ暗になった。