可愛くないから、キミがいい【完】





「みゆちゃんの歌声かわいいね」



和泉君にイライラしながらも、なんとか歌い終えたら、あおい君が知らない間に私の座っている場所のそばに来ていた。

なほちんが、マユとコータ君と三人で話しながら、ちらちらとこっちを見てくる。


「え、っと、ありがとう、あおい君。でも、みゆ歌へただし、可愛くないよ?」



これはちょっとまずいかもしれない。

あおいくんが私のところにきたら、なほちんが浮いてしまう。それで、和泉君に近づかれたら計画は台無しだ。


「今まで会ったなかで、みゆちゃんが一番可愛いって思ってる。めちゃくちゃ俺のタイプなんだよね」



眼鏡の奥でふにゃりと笑った顔は結構タイプだけど、セリフが嘘くさい。でも、まあ、悪い気はしない。


天使スマイルを発動しながら、メロンソーダをちびちびと飲む。

隣では和泉くんが自分の歌う曲を決めている。私とあおい君の様子を気にとめる仕草ひとつない。

ちょっとは心配してくれてもいいのに。可愛い女の子がとられちゃうかもしれないって分かってるのだろうか。


平然としているのがムカつく。

それで、もっとムカつくのが、私が誰にも言ってないけど大好きな、一昔前のシンガーソングライターの曲を選んでいるところ。



「おい、しゅう、またマイナーな曲いれただろ」


トシ君の呆れた声に、ははって和泉君が小さく笑った。