「はやく。貸せ、リモコン」
「いやだ」
「まじで。貸して」
今の今まで平然としていた和泉しゅうの顔に、ほんの少し焦りのようなものが生まれる。
本当に、ホラーがだめみたいだ。
そういうギャップはダサいって思っていたのに、いざ焦っている現場に直面したら、ダサいというよりは、ただ可笑しくてちょっと笑いそうになる。
ここはもはや私が一秒たりとも天使になれない魔界なので、私は意地悪でいてもいいのだ。
とうとう、映画が始まる。
そうしたら、和泉しゅうは、はーーー、と長い溜息を吐いた。
「ホラーとグロだけは、まじで無理。冗談抜きで」
「みゆは、ホラーが見たい」
「俺は、見たくねーから、変えて」
「やだ、みゆは見たいし、……今日は、みゆが好きにしていい日じゃなかったの?」
「は? それは、もう終わっただろ。あー、無理。お前、やっぱ馬鹿性格悪いな」
「和泉くん相手だし、もう別にいいんですけど」
そう言ったら、「こっちは、今は全然よくねーんだよ」と、ものすごく怖い顔で睨んできた。



