それで、結局。頬杖をつくのをやめて、先に視線を逸らしたのは和泉しゅうの方だった。
ぱちん、とたった今まであったむずむずする柔らかい空気が消えてしまう。
消えたそばから、安堵と落胆の両方が私の中で生まれて、精一杯安堵だけをたぐりよせた。
「別に、そんなこと聞いてねーだろ。だいたい察しはするけど」
「和泉君も本当は慣れてるくせに。みゆだって、そういうの分かるもん」
「慣れるとか俺はないけどな。別の人間とのことは、全然、別だし」
「……………へぇ」
「そろそろ、風呂入るわ」
「ふぅん」
「先、寝てれば」
「眠くないし、みゆの、好きにする」
「あ、そ」
そのまま、和泉しゅうは着替えをもってすぐに部屋を出ていった。取り残された部屋で、もう一度、膝を抱えて座る。
しばらく、動物のドキュメンタリー番組をぼんやりと見ていたけど、ローテーブルの上に散乱していた夕食のゴミを片してしまうことにした。
買ってきてくれたのだからそれくらいは私がするべきなのだという常識くらい持っているつもりだ。
レジ袋の中に空になった容器をまとめていれて、テーブルの下に置く。
そして一度携帯で、SNSの確認をする。
テーマパークの写真を見た人たちからだろう。
『彼氏?』とか『可愛い!』とかそういったメッセージが、たくさん来ていた。
こういうものに、私は、満たされていたい。
そう思うのに、今はそのすべてに返事をする気に慣れなくて、そのまま携帯も鞄にしまう。



