可愛くないから、キミがいい【完】





「お前、風呂浸かってた?長いわ」

「人のお風呂、勝手に溜めるとか、みゆ絶対しないもん」

「半身浴でもしてんのかと思った。つーか、服、それさっき着てたやつだろ」

「そうだけど」


そう言ったら、和泉しゅうは立ち上がり、躊躇いもなくはる兄さんのクローゼットを開けた。


「はる兄の彼女の使っていいって言ってたし、借りたら?」と、黄色のチェック柄の可愛いパジャマを私に投げてくるものだから、キャッチせざるを得ない。

それから、和泉しゅうは、雑にクローゼットの中を漁って、自分の分の着替えも出した。


相手は従兄だから、遠慮の気持ちがほとんどないのだろう。和泉しゅうのせいで、私までなんだか遠慮の気持ちが薄れてしまう。



「着替えてきたら?」

「……和泉君が気をつかって、部屋から出ていくとかしてくれればいいのに」

「べつに、俺は、お前がここで着替えてもいいし」


憎たらしい表情で、和泉しゅうが笑う。

ムカついたから、ふい、と顔をそむけて、結局、私は廊下で着替えることにした。