可愛くないから、キミがいい【完】






「……俺のいとこ、ピアノと彼女のことしかあんま考えてないから、頭のねじだいぶはずれてんだよ」



しばしの沈黙を破ったのは、和泉しゅうだった。

はー、と、怠そうに溜息を吐いて、その場にしゃがみこんだ姿が、心底ウンザリしたような感じで、私だってそんな気持ちなのに、となんだかムッとしてしまう。



「和泉くんと、全然似てなかった。色々どうかと思うけど、素敵な人ではあると思う」

「あー、はる兄?」


頷いたら、「お前、ああいう男の方が好きそうな」と笑われた。

そんなことはないけれど、和泉しゅうよりは断然マシだと伝えたくて、また、しっかりと頷く。


それで、少し気が抜けて、荷物を床に下ろして、私もしゃがんだ。


ここで一晩、二人きりで過ごすのかと思うと、奇妙な気持ちになってくる。

ふと携帯を確認したら、パパとママからメッセージが届いていた。やっぱり、パパがかなり心配しているみたいで、〈みゆは大丈夫だよ〉とだけ返事をする。