この男だって信用に値するかどうか、はっきりしないけれど、なぜか大丈夫だと思ってしまっている。ほとんどの男の子に向けられるような目を向けてこないことに、今だけは、救われていた。
「なにが」
「今から行くの、男の人の部屋?」
「あー、そういうことなら、たぶん、大丈夫」
「信じるからね」
「野宿とどっちがいいんだよ」
「感謝はしてるけど、ちょっとは不安なの」
「倒せない敵は仕方ないから俺が倒してやるわ」
「和泉くんが敵になったらどうすればいいわけ」
もともと敵かもしれないけど、とは言わないでおく。
和泉しゅうは、「お前の方が、強いだろ。溝に落としてくるくらいなんだから」とまたムカつく顔で笑う。
それからすぐに、私たちは、その和泉しゅうのいとこのマンションとやらへ向かうことになった。



