「あんたにだけは、そういうこと、何も言われたくなかった!」




どん、と力一杯胸を押す。


だけど、この前とは違って和泉しゅうはびくともしなかった。

不甲斐ない。

すぐに体の向きを変えて、
和泉しゅうを置いて駆け足で階段をおりる。




次から次へと涙がこみ上げてくる。

こんなはずじゃなかったのに。


誰の目にも映りたくなくて必死に俯いた。

天使じゃない。本当に、悪魔みたい。


可哀想なやつ、って和泉しゅうに言われた言葉が思考回路を埋め尽くしている。





「……だいっきらい」



和泉しゅうなんてやっぱり、大嫌いなのだ。


キスするよりも、和泉しゅうが私に言った言葉のほうが遙かにひどいと思う。

追いかけてすら来ない。

なんなの。本当に、大嫌いだ。



最悪な1日の締めくくり。


走りながら三つ編みを解く。

優しく触ってきた記憶も、少しだけあらっぽく掴まれた記憶も、できたてだからすぐに蘇ってくる。

胸が苦しくて、頭の奥が熱くて仕方なかった。