オフィスラブはじまってました






 とりあえず、ミノムシの殻をはがしてみよう、と思いはしたものの。

 やっぱり可哀想な気がするな、と柚月は思っていた。

 なにかするなら、挨拶まわりに出る前に。

 今のままでは緒方さんとひなとが出かけたときよりぎこちない。

 まるで、こっちの方がニセの恋人同士みたいになっている、と柚月は思う。

 考え抜いた挙句、柚月は寝袋を手にひなとの部屋のチャイムを押していた。

「ど、どうしました、柚月さん」
と驚くひなとの目は寝袋を見ている。

「泊めてもらってもいいか」

「い、いいですけど……」
と言うひなとの目は、やはりずっと寝袋を見ている。