オフィスラブはじまってました

 緒方は片手で自転車を支えたまま、

「すまん。
 『ちょっと好き』じゃなかったようだ」
と言って、もう片方の手でひなとの腕をつかみ、キスしてこようとする。

 ひっ、と緒方を避けるように後ずさったひなとは壁で後ろ頭を打った。

 体勢を崩し、そのまま座り込む。

 緒方は冷ややかにひなとを見下ろし、
「何をやっているんだ無様(ぶざま)だな」
と言ったあとで、引っ張り起こしてくれた。

 あの~、貴方が私を好きだなんて、到底思えないのですが……、
と相変わらずな緒方の言動に、ひなとは思う。