オフィスラブはじまってました

 



 帰り道、ひなとは柚月と一緒になった。

 あんな話をしたあとなので、つい、意識してしまい、自分の方がチラチラ柚月を窺ってしまう。

 私ばかりが見てますよ。

 やっぱり、嘘じゃないですか、瑠美子さん。

 この人、一緒にバスに乗ってても、夜道を歩いてても、全然、こっちを見ないんですけど。

 アパートの外廊下まで来たところで、柚月は、
「じゃあ」
と言って、さっさと部屋に引っ込んでしまう。

 うう……。

 なんか柚月さんが遠くなってしまったような、と思ったとき、背後で、
「わ」
と脅かす気もなさそうな声がした。

 が、余計にビビッて、すごい形相で振り向いてしまう。