「……ここは寒いでしょう?
賢人は戻って。
……私も……落ち着いたら帰るから」

馬鹿か。
放って置けるわけがないだろう。

「もうちょっとだけ近づいていいか?」

「え? ……なんで?
ちょ、ちょっと!」

思いっきり抱きしめてやりたいけれど、今は肩を抱くだけにする。

「……少しは寒さも和らぐだろ?
嫌なら、さっさと泣き止め」

肩が震えているな。

「……もうね、とっくの昔に諦めていたのよ?
最近じゃ、忘れてたくらい。
でも……不意打ちはダメね。
……ちょっと動揺しちゃった」

「ん……」

「いつから?
……いつから気付いてたの?
私、誰にも知られてないと思ってだんだけど……」

「あー……。
だから……なんとなくだ。
ほら、クリスマスイブのミサとか、俺は別のところで接する機会が多かったからな。
兄貴が一緒のときもあったし。
でも安心しろ。
気付いてたの、俺だけだと思うぞ」

「……本当?
なら、見られちゃったのが賢人で良かった……。
あ、でもダメ!」