「光……ここにいたのか」

さっきまでの熱気が嘘の様だ。
底冷えのする大聖堂の1番後ろの席に、ポツンと座っている光がいた。

「……賢人……」

「……ッ! 泣いてるのか……?」

「……放っておいて。
……何かあったの?」

「いや……兄貴に呼び出されて。
今大聖堂に来てるからって。
もう学校の前であって別れたけど……。
兄貴が光に会ったって言うから、まだ残っているのかと思って来てみたんだ」

「……そう」

「……ここ、冷蔵庫の中みたいになってる。
風邪引くぞ。出よう。」

「……出たくない」

「……兄貴だろう?
聞いたのか?」

「……」

光、俺には隠さなくていいんだ。

「ずっと……そうじゃないかと思ってたから。
お前の気持ち、わかってるつもりだ。」

「……! なんで⁇」

「……なんとなくだ。
辛かったな。
早すぎるもんな、結婚。
大学卒業して、まだ1年だぜ。
ま、事情が事情だから仕方がないけど。
あーあ、確かにそれじゃ帰れないな」

明らかに泣いた女の顔。
誰にも見せたくない。