ただ、その事実は、俺を動揺させた。

光は学園のアイドルで、誰のものにもならない。恋もしないものだと思い込んでいたのだ。

でも目の前で、必死に涙を堪えている光は、女の顔をしていた。
天使も恋をする女だったのだ。

どうして兄貴なんだろう。
兄貴を想ったところで、結果は見えている。

俺の中で何かが琴線に触れた。
気に入らない。

だからと言って、学年が1つ下の俺は、光の眼中に入ってはいないだろう。
圏外のはずだ。

でも、俺はどうしても光の心が欲しくなった。

当たり前のことだが、天使だってただの女の子で、いずれ誰かのものになるかもしれないのだ。
だったら俺のものにする。
あの明るい笑顔も、美しい容姿も、ちょっと天然な振舞いも、全部俺のものにする。

中3のクリスマス、俺は自分自身にそう誓った。