「あ、でもダメ!」

「は? 何が?」

「ちょっと離れて。
こんなところ誰かに見られたら大変よ。
私、卒業までいられなくなっちゃう!」

「え? なんでだ。
いや、誰もいないし。
こんな寒いところ……」

「賢人のファンは全学年にいるのよ?
怖い怖い。睨まれちゃうよ。」

いや、ため息ついて呆れたような目で見るけどね。学園のアイドルだって言う自覚を持ってほしいな。
こっちは死活問題なんだから。

「そんなのさー、誰に見られても平気だけど。
それに、別に俺は誰からも好かれたいわけじゃない。
……俺が好きなやつ、ただ1人の女に好かれたいんだ」

あ、さっきメグが言ってた好きな人ね。

「うん。
賢人は正しい。
そうだね。
好きな人に好かれたい気持ちはわかる。
でも、学園のアイドルの賢人が落とせない子っているの?」

「……」

「え、どんな子?」

ちょっと……いやかなり興味がある。
だって賢人に落とせない子なんていないような気がするから。

「………天使」

「え?」

「天使みたいな子」

「……」

マジか……。
それは落とせないわ。
しかもこの先も。何があっても無理。
あの2人が別れることは絶対ないもの。