「…うん。そうなんだ。
それで、とりあえず、時短営業にしようと思った。22:00ラストオーダの22:30クローズ。
けど……さすがに早かったみたいで、客からクレームと言うか、理由を求められた。
新婚だから、で通してたんだけど、そうすると、誰もが赤ちゃんを期待するんだ。
それが………微妙に辛くてな。
詮索されないように、兄貴に助けを求めたんだ」

「嗣人(つぐと)くん?」

「ああ。クローズまで任せられる人を回して欲しいと頼んだ。
そこで来てくれたのが、何故か賢人だった」

「は? 賢人⁉︎」

「あぁ。成人したばかりで、俺達と同じH大に通いながら、何故かバイト漬けの生活をしてたんだ。あいつ」

「バイト漬け⁇」

「家庭教師を3つ掛け持ちして、たまにヘブンリーを手伝って」

「……それは知らなかったな。
意外だよ。理人はそこそこ恵まれた生活をしていただろう?……誰もが認める御曹司だもんな」