「俺たちはさ、アイツの妥協人生が信じられないの。許せないんだ」

「そうそう!
好きなら好きって、最初から本気で好きな相手に言えっつーの。
本気で好きなら代わりの女で補えるわけないんだ。
それを一度ならまだしも、何度も繰り返すって、意味が分からん」

「……確かに、鉄平と賢人には理解できないだろうね。2人は真っ直ぐに生きてるからな。
俺は、ちょっとわかるぞ」

「櫂人さん……」

「40過ぎるまで、何にもなかったわけじゃないからな。無意味な付き合いをしたつもりは一切ないけど、実らなくて落ち込んだ事はあるよ。そういう時に、何かに縋りたい気持ちはちょっとわかるんだ」

「……何に縋るんですか?」