大正時代。それは大衆文化が花開き、多くの抗議活動が行われた時代である。

西洋文化が強くレトロチックな洋風の建物が並ぶこの街には、とある噂話があった。それは、妖怪がこの街には数多く潜んでおり妖怪たちから人間を守る謎に包まれた剣士たちがいるというものだ。

これは、そんな街に住む十五歳の少女の物語ーーー。



髪に紅色のリボンを飾り、矢絣柄の着物に紺色の袴を履いた流華(るか)は学校へ行くために歩いていた。流華は名門と言われる女学校へ通っている日本で指折りのお嬢様だ。

「流華さん、おはようございます」

流華が歩いていると、花柄の着物に赤い袴を履いた流華の友達である小町(こまち)が歩いてくる。流華も「おはようございます、小町さん」と微笑み、二人で話しながら学校まで歩くこととなった。

「そういえば、流華さんは例の噂をご存知ですの?」

華道や書道の話をしていたのだが、小町に訊ねられて流華は首を傾げる。