数日後。
今日は舞台の本番で。
蓮見と一緒にいられる、最後の日。
この先、一生後悔しないように、
蓮見とは笑顔でサヨナラしたいけれど。
その願いは、きっと叶えられない。
劇場入りして
蓮見は笑顔で挨拶をくれたけれど。
それ以降、目も合わせてくれない。
忙しそうに、団員の着付けやヘアメイクをしている。
「マトイ君も、璃湖ちゃんにメイクをしてもらう?」
楽屋の鏡の前に座る俺に、
女の子が話しかけてくれたけれど。
「自分でできますから」
俺は、穏やかに断った。
だって。
蓮見はもう、俺なんかと関わりたくはないだろうし。
俺だって、これ以上蓮見に心を惑わされても、
どうしようもできない。
羽織袴の着付けも、メイクも、
ヘアアレンジだって自分でできる。
俺は小5の頃から、
蓮見に叩き込まれてきたから。
俺は、蓮見の希望通り、
前髪と左横の髪をくるっとねじり、ピンでとめ。
さっと羽織をまとい。
本番のステージに向かった。