「そう……だよね……」



 俺の目の前。


 どうしようもないほど、大好きでたまらない女が、
 痛々しい笑顔を顔面に貼り付けている。



「マトイ君。他に好きな子がいるしね」



 だから、笑うなって。

 苦しそうに、瞳を揺らしながら。



「私じゃ……
 その子の代わりには……ならないよね?」



 何も答えられない俺に、
 蓮見は、深々と頭を下げた。



「舞台の本番、よろしくお願いします」


 
 そして蓮見は、俺の部屋を出て行った。



 オルゴールを、置き去りにして。