蓮見の唇に触れたくて。

 俺の唇で、蓮見を感じたくて。


 俺はゆっくりと、蓮見の顔を引き寄せた。



 まぶたを伏せ、目を閉じた蓮見。



 俺を受け入れてくれたことに、
 嬉しさが込み上げてくる。



 蓮見の唇まで、あと1センチ。

 たった1センチ。



 それなのに。


 それ以上、
 俺の唇が、蓮見の唇に近づこうとしない。



 目を閉じた蓮見に
 俺は、情けない言葉を落とした。



「蓮見とは……無理……」





 だって。


 オマエの記憶を消した意味が、なくなるから。

 俺と蓮見が結ばれることはないのに。



 また俺なんかを好きになったら。

 蓮見が、傷つくだけだから。