稽古場からアパートまで、
 頼りない外套が灯る、薄暗い道を歩く。


 歩きなれた道なのに

 やっぱり、夜に一人で歩くのは背中がブルッとする。



 その時。



「遅すぎ」



 どこからともなく声が聞こえ

 私はウサギのように、びょんって飛び跳ねた。



「不審者で通報すんなよ。俺だから」



 ん? マトイ君?



 な……なんで

 こんな人気のない細道にいるの?

 私のことを、待ち伏せしていた?



 そんなはずはないと、分かっているつもりなのに。

 胸が勝手に、バクバクをはじめ。


 
 恥ずかしさで、
 ついマトイ君から視線を外してしまう。