☆璃湖side☆

 ふ~。
 今日も、なんとか乗り切った。



 ただ今の時間、夜の9時半。



 劇団の衣装部屋の電気を消し、

「お先に失礼します」と、
 劇団のみんなに笑顔を送り、私は家路についた。



 今日が、マトイ君と合同稽古の最終日だった。


 
 今日も、前回も。
 私はマトイ君と、一切話をしていない。


 挨拶程度に、視線を絡めただけ。


 自分の出番以外は、ずっと衣装部屋に籠っていた。



 
 マトイ君に会うのが怖い。


 声を聞くのも。

 笑顔を向けられるのも、ものすごく怖い。



 だって。

 マトイ君にズブズブはまりそうで。


 大好きになって、抜け出せなくなりそうで。


 私は恋なんて、絶対にしちゃダメなのに。