「マトイ、体がだるいんじゃない?」



 そう言いながら伸ばした、私の手のひら。



 マトイの額に届く寸前で。 

 パシン。



 怒りを瞳に宿したマトイに、振り払われた。


 しかも、思いっきり。




 う……

 地味に痛いじゃん。



 それに、私を拒絶するような目で
 睨まないでよ。



 私は普段、
 冷酷マネージャーを演じているだけで。


 本当は、心が脆くて。

 傷つけられると
 すぐに折れちゃうんだから。




 早く、怖い鬼のお面を
 顔に貼りつけなきゃ!!


 そう思うのに。


 ポキっと折れた心が
 漆黒の海に沈んでいって。

 浮き上がろうとさえしてくれない。




 ひきつった私の顔。

 怒ることも、笑うこともできず
 能面のように固まったまま。




 その時。



 聞き間違い?


 そう思えるほど弱々しいマトイの声が、
 私の耳に届いた。